まちのアトツギ

民報サロン2ラウンド目。今回は私が所属しているエリアリノベーショングループ「まちのアトツギ」について寄稿しました。メンバー間で刺激し合い教わることも多く、私の仕事の姿勢にも反映されていると感じています。これからどう変わっていくのか、一過性のムーブメントではなく、独自性のある取り組みを持続的に進めていく先を見てみたいものです。


「まちのアトツギ」

 郡山駅から南へ徒歩15分ほどの場所に古き良き下町の風情を感じさせる郡山市本町はある。その昔、奥州街道沿いやその裏の通りまで多様な店がひしめき合い、多くの人の往来があったであろうまちのにぎわいは、今では写真や当時の住宅地図など、過去の資料を見てイメージすることでしか感じることはできない。店主の高齢化や後継ぎ問題、その他理由はさまざまあると思うが、多くの店はその役目を終えたかのようにひっそりとしている。もしくはアパートや駐車場に姿を変えている。


 その商店街の一角で毎週木曜日の夜、私たちはそっと明かりをともす。私は、本町周辺エリアのまちづくりを考える「まちのアトツギ」というエリアリノベーション団体のメンバーである。これは既にある空き家や空き店舗などを地域資源のひとつと捉え利活用し、エリアの価値と魅力を高めるまちづくり活動だ。私たちは建物の古さを生かし、魅力に変え、まちを再生していくコミュニティー主導型の取り組みを進めている。メンバーは大正時代から続くガラス店や住人有志を中心に、建築士、不動産業、古道具店、カメラマン、デザイナーなど多様で愉快な仲間で構成している。


 できる人が、できることを、できるところから―。メンバー全員が妥協せずとことん話し合う。ああでもない、これはどうだ、そうしよう、いやまてよ、といった具合に真剣だけどユーモラスに議論を重ね物事を進めていく。最近、このミーティングは私の心のよりどころになっていることに気付いた。まだ課題は山積みだが、少しずつ前に進んでいく姿勢に自分自身励まされる。勝手に思っているのだが、たき火のようなチームで心がぽかぽか温まるのだ。


 話を戻そう。本町一丁目の角にたたずむ古い長屋風の店舗がある。昔は果物屋だったり、パン屋だったりして、その時のまちの営みを紡いできたが、ここ数年空き家になっていた。この場所を大家さんの厚意で貸していただき、「nokado(ノカド)本町」と名付け、本町の昔の写真や地図、商店街の店で当時使われていた品々を展示するイベントを開催した。昔を懐かしむ人、写真に写っている人の話をする人、私たちに当時の話を聞かせてくれる人など、思い思いの楽しみ方で強く印象に残るイベントとなった。


 その後、秋季例大祭に着用する本町エリアの法被の展示や秋季例大祭への参加、まち歩きをしながらごみ拾いをしておにぎりを食べるイベント、大学生の協力のもと「推し本」を本町の各所に展示し閲覧できるイベントなど、さまざまな取り組みをしてきた。そして今年に入り、ノカド本町のDIY改修をメインに進め、4月には塗装のワークショップを実施してさまざまな方に参加していただいた。背中を押してもらっているようでありがたい。


 皆さんの協力のもと再生したノカド本町で5月24日、改修後初の催しとなる「ノカドびらき」を行うことになった。ぜひ本町の「今まで」と「これから」を体感しに足を運んでもらえれば幸いです。私たちはまちの明かりをともし続ける交差点でありたい。私たちはみんな「まちのアトツギ」です。もちろん、興味を持ったあなたも。(郡山市安積町、コノマチ不動産社長)

福島民報 2025年5月22日 朝刊より